秩父市の中央に位置する秩父神社は秩父地方の総社・鎮守で、創立は2080年余り前と云われる。平安初期の典籍「国造本紀」によれば、人皇第十代崇神天皇の時代に、八意思兼命(ヤゴコロオモイカネノカミ)を祖とする知知夫彦命(チチブヒコノミコト)が知知夫国の初代国造(クニノミヤッコ)に任命され、大神を祀ったのが始まりとされている。

(後述の祭神以前に何らかの「大神」が祀られていた。)

当社は戦国時代(永禄12年-1569)に甲斐の武田信玄の手により焼失した(信玄焼き)。現在の権現造りの社殿は徳川家康が再建したもので、本殿、幣殿、拝殿が並ぶ。社殿にはさまざまな彫刻が施されている。なかでも左甚五郎作の「つなぎの龍」は有名。

社宝の御輿(みこし)は県下最古で県文化財。

【所在地】 埼玉県秩父市番場町1-3 電話0494-22-0262

【祭神】 八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
      知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)
      天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
      秩父宮雍仁親王(ちちぶのみややすひとしんのう)

【主な祭典】 節分祭(2月の節分の日)、夏祭(7月20日)、例大祭(12月2.3日)

【神門開門時間】  5:00(冬季6:00) 〜20:00

【神礼授与所】 8:30〜17:00

【入場料】 無料

【駐車場】 有、無料

秩父神社正面

一の鳥居

境内に入ってすぐの右手にある重厚な造りの手水社。まず此処で身を清める。

境内右手の神馬舎(手前)と平成殿(奥)

1F:社務所、諸祈願受付、喫茶店
2F:秩父宮展示室、企画展示室(無料)

境内左手の神楽殿

神門(左:手前から、右:裏から)

神門から拝殿を望む

神門の左リ奥にある白虎門

権現造りの拝殿。昭和41年に台風で損壊したが4年後に旧材を用いて修復された。背後の柞の森は神社創建当時から存続する森。

向かって右が恵比寿様、左が大黒様

「知知夫神社」の扁額

当社殿を再興した徳川家康は、寅の年、寅の日、寅の刻生まれとされ、虎にまつわる物語が少なくない。それにちなんで拝殿の正面には4面の虎(寅)の彫刻が施されている。左より2つ目の「子育ての虎」は、名工・左甚五郎が家康公の威厳と御祭神を守護する神使として彫刻したものである。狩野派の絵画の流儀では、虎の群れの中に必ず一匹の豹を描くことが定法とされていたことから、母虎が豹として描かれている。

本殿東側に描かれている鎖でつながれた青い竜の彫刻も左甚五郎作とされている。

その昔、秩父札所十五番小林寺の近くに「天池(アマガイケ)」という池があり、その池に住み着いてた龍が暴れた際には、必ずこの彫刻の下に水たまりができたと云う。そこで、この彫り物の龍を鎖で繋ぎ止めたところ、その後は龍が現れなくなったと云う。

昔から日本人は、家や地域の四方を青龍・朱雀・白虎・玄武しいう四神が守護している信じてきた。この秩父神社の東北(表鬼門)を守護する青龍の姿を名工左甚五郎が彫刻したものである。

社殿西側にも龍の彫刻があるが、こちらは雌の龍と言われている。(下方の三猿の写真参照)

本殿北側中央に彫刻された「北辰の梟(ふくろう)」。

体は正面の本殿を向き、頭は正反対の真北を向いて昼夜を問わず祭神を守っている。当社の祭神である妙見様は、北極星を中心とした北辰北斗の星の信仰であり、この梟が見ている方向に妙見様が出現することから、祭神と特に縁の深い瑞と鳥と言える。

洋の東西を問わず梟は知恵のシンボルとされおり、当社の祭神、八意思金命も知恵の神として崇敬されていることから、思慮深い神の使として社殿北面に施されたと思われる。

徳川家康を祀る日光東照宮の三猿(さんざる)は、「見ざる・聞かざる・言わざる」として有名だが、当社の三猿はそれとは全く違った表情をしていて、「よく見・よく聞いて・よく話そう」といった仕草を表している。俗に「お元気三猿」として親しまれている。

そのほかにもさまざまな絢爛豪華な彫刻が建物の壁に飾られ、社殿を一層華やかなものにしている。

← 本殿の全景

平安時代から中世にかけて、朝廷の「二十二社」泰幣制度と共に全国の各国毎の「一ノ宮」「総社」の運営、祭祀が尊重されるようになった。秩父地方は知知夫国として独立した国であったが、その当時には武蔵国に属していた。武蔵国の総社は府中市の大国魂神社であり、その第四ノ宮に当社のご祭神が泰祀された。

古くから当社の境内社の一つとされて来た「天神地祇社」は、全国の「一ノ宮(計75座)」をお祀りしている。これほどの多くの一ノ宮の神々を境内社としてお祀りしている事例は珍しいものである。

何故このような形らになったかは定かではないが、ご祭神の「八意思兼命」は多くの神々の意見を纏め、折々の聖断を下す神として古典神話のなかで活躍していることから、沢山の一ノ宮の神様がお祀りされたとも云われている。

この「天神地祇社」のそれぞれのご神前にお参りすれば、あわせて全国の一ノ宮を遥拝することとなるそうである。

  柞稲荷神社 御祭神「倉稲魂神」
  手前は「神降石」

諏訪神社 御祭神「建御名方神」

日御碕宮 御祭神「須佐之男大神」

  左:枉津日社 御祭神「禍津日神」
  中:天満天神宮 御祭神「菅原道真公」
  左:東照宮 御祭神「徳川家康公」

← 授与所

 

→ 御朱印 300円